健康食品の市場は年々伸張し続け、認知度も高まり、健康食品の利用者も確実に増え続けています。この事実は、消費者の健康食品に対する信頼感が増してきているという別の側面とも呼応しているように思われます。しかしながら、一方で、相変わらず健康食品による健康被害を含めた消費者の苦情が減らないことも事実です。この様な状況の中で、今後、健康食品の市場が大きな発展を遂げていくためには、この業界の信用をさらに高めていくことが重要な鍵になります。健康食品にまつわる不祥事は、特に錠剤及びカプセル状等の形状を取る製品に多いように思いますが、消費者に対して不信感をもたらし、当然のこととは言えこの業界の信頼性を損なうものです。過去の検討会を初め様々な審議会の議論を見ても、健康食品の是非を論じる場合には必ずと言ってよいほどこの不祥事が問題として取り上げられ、健康食品の本質に対する論議に暗い影を投げかけています。この業界の発展に、不祥事に係わる問題が取り除かれたときに、もうひとたび飛躍する機会が訪れるのではないかと言っても過言ではないように思われます。

 昨年の5月末で終了した「健康食品に係わる制度のあり方に関する検討会」(あり方検討会)は、特定保健用食品のカテゴリーに新たな制度を導入することを中心に纏められ、「いわゆる健康食品」については多くの問題を将来の検討に委ねる形で終わりましたが、安全性に係わる問題だけは、「いわゆる健康食品」も含めて錠剤及びカプセル状等の食品について取り組むための具体的な課題として残されました。この課題に対する取組みとして、本年2月1日付の厚生労働省医薬食品局食品安全部長による通知に於いて二つのガイドラインが示されました。言うまでもなく、GMPと原材料の安全性に関する自主点検に係わるものです。原材料が抽出・濃縮され、摂取しやすい錠剤あるいはカプセル状の形状に加工されると、過剰摂取による健康被害の機会が増えるという心配があります。また、不純物が製造工程において濃縮されやすいという状況を無視できないことも確かです。この様な状況下に生じる不祥事は、明らかにこの業界の発展を損ない、消費者の不信感を招くことになります。その意味で、上記の二つのガイドラインが求めるものは、健康食品の信頼性を高めるために業界が取り組むべき避けて通れない課題と考えられるのではないでしょうか。

 時を同じくして欧米はもとより、アジアの近隣諸国、またその他の地域を含めて国際的にサプリメントのGMPに対する取組みが本格的に始まっています。健康食品(サプリメント)が本来持っている機能を十分に発揮させるためには、品質及び安全性の確保は不可避であり、品質保持のためのGMPという手法は国際的に標準化していく傾向にあるように思われます。特に、製品の国際的な流通を考えるときに、この問題は避けて通れないものになります。そのためにも、わが国においてもサプリメントの形状を取る食品のGMPに業界が積極的に取り組むことは、この業界の将来を確実にするためにも必要です。
 日本健康食品規格協会(JIHFS)はGMPという制度が業界に浸透していく過程で、個々の企業のGMPに対する取り組みを支援するために、製品、原材料および輸入品に対するGMP規範を整備し、第三者機関(NPO法人、日本医薬品食品品質保証支援センター)による認証のための査察を実施するシステムを立ち上げました。
また、GMPに適合した施設で製品が製造されたことを保障する認証マークの付与も可能に致しました。これによって、製造に係わる品質の保証を消費者に理解してもらうことが可能になり、この業界の信頼性が増すための一助となると期待しています。なお、JIHFSはあくまでも公平性と透明性を保持するために、中立の機関として設立いたしましたので、健康食品の製造・販売等に係わる個々の企業のお役に立てることを念じています。

 健康食品の世界は、今、国際的にも国内的にも一つの変革期を迎えているように思います。健康食品に対する消費者の信頼を高め、本来の機能を十分に発揮して健康の維持増進に役割を果たす業界として発展することを期待するためにも、JIHFSのGMPに対する業界各位のご理解とご支援を賜りたく、宜しくお願いいたします。
平成17年9月
一般社団法人
日本健康食品規格協会
理事長  
池 田 秀 子
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